![]() 半自伝的小説、と銘打ってありました。 38歳の女流作家、夏帆。 母との幼い頃からの関係性のゆがみを、長年抱えながら生きている。 母の顔色をうかがいながら、精神的に押さえ込まれていた少女時代。 父の浮気に悩み、女の嫉妬むき出しで、妹にではなく自分にだけ、愛人や父への恨みつらみをせきららに聞かせてきた母。 いつでも、女同士として意識し、母性というものを母から感じたことがないまま育ち、母の呪縛から逃れられない彼女のうつうつとした感情。 娘の視点が主なので、実際のところはわからないけれども。 生まれた環境、こんな母のもとに生まれることになったならば・・・と思うところはありました。 たとえ母と娘、親子であっても、一個の人間同士だと思うには、幼い少女には過酷すぎる…。 大人になり、自分で判断できるようになったと思えるようになったとしても、 ひとつひとつのことに、これは母との関係性が影響してるのかもと思ってしまうのは仕方のないことなのだろうな。 娘として読むのも母として読むの、うつうつとしてしまう。 最後にすこし光はみえた感じが。 最終章の父と兄のせりふですくわれたとみるか、ちょっと都合がいいとみるかは意見が分かれるかも。 ![]() なんにもないけんど、・・・光はある! 高知県庁に実在する 『 おもてなし課 』 、を舞台に、高知県を観光で盛り上げようとする若者たちの物語。 高知県出身の作家の、愛郷心とエールが込められています。 若手職員・掛水の奮闘ぶり、アルバイトの多紀ちゃんとのやりとりと恋のゆくえ。 掛水をとりまく、魅力的な登場人物たち。 民間感覚といわゆるお役所仕事の狭間で悩み、もがい、少しずつ成長していく主人公。 さわやかな読後感。 まさにストーリーテラー、有川さんという感じ。 1本の映画を観ているよう。 さくさくと読めて楽しい、エンターテイメント作品。 ![]() これは、ある意味ホラー。 一見何の不満もなさそうな普通の主婦が、新しい美容室の担当になった若い男からの1通の営業メールを受け取り。 それになにげなく返信をしたことから、彼女の人生があらぬ方向へと…。 にべもなく言ってしまえば、若い美容師にストーカーする主婦のハナシなんだけど。 彼女は、別に美容師に恋焦がれているわけではなく、 ただただ、初めての男でもあり、情熱的だった以前の夫の幻想を追い求めているんだろうな、 そこにいるようでいない夫との距離の図り方に、つまづいてしまったんだな、と悲しい気持ちで読み進めました。 夫婦は、いつまでも生々しい男女じゃいられない。 形をかえてもなお、受け入れ、寄り添っていけるのか。 そこには数えきれないほどの妥協と、慣れ、同じくらいの親しみと同士のような感情が同時に存在する。 それが、世間にあふれている夫婦の本当の姿なのかも。 41歳の主人公小夜子は、ある意味、せつないほどに純粋で、不器用なんだと思う。 具体的に壊れていく感じ。 美容師やその彼女を追い詰めていく様は、なんともいえず、恐ろしくて。 読んでいるうちに止まらなくなりました。 井上荒野さん、初めてだけどよかった。 他のも読んでみよう。 ![]() 6つの中編が、ひとつの幸せな結末へうまくつながっていく小説。 主人公は、30~40代の、さまざまな事情を抱えた男女。 安楽死事件の責任をとって、離島の医師として、赴任している美和。 高校からの同期で、個人病院を切り盛りする鈴音。 ふたりが対照的な女性として描かれていながら、べたべたしない信頼関係が心地よく入ってくる。 余命半年と宣告された鈴音が、自分の病院をまかせるために、美和を呼び寄せるところから、物語は大きく展開していく。 もうこの歳で傷つきたくない。 相手を思いやる心と自分の感情で揺れ動く。 でも、ひとりは寂しい…。 大人の男女の、心の動きが丁寧に描かれていて、よかった。 初めての作家さん。 もっと読みたくなりました。 ![]() 念願の教師になり、妻として母としても懸命だった愛する人が、2年前がんであっけなくこの世を去った。 残された夫、そしてふたりのこどもたち。 彼女がことあるごとに語った、いちばん思い入れの深い、小~中学時代を過ごした、ニュータウン希望ヶ丘。 この町に3人で住むことで、再生しようとする家族の物語。 脱サラし、新しい街で塾長として再出発する父、田島。 そこで出会う、さまざまな個性的な面々。 特に、妻圭子の初恋の相手、エーちゃん。 学生時代のことではあっても、自分の知らない妻の姿と、なんとも求心力のあるかっこいいエーちゃんに、複雑な感情を隠せない。 父と息子、父と娘、妻と夫。 家族として向き合う真摯な姿が丁寧に描かれています。 18で出会い、40で突然別れてしまった妻を思う気持ちは、せつなくなるほど。 こんなふうに思われたいというのが、妻たち理想なんでは。 ふだんなら恥ずかしくて表現できないような夫婦の絆を描くのが、重松さんらしさ。 最後の最後で、自分と出会ったから、妻は早くに命を落としたのでないか、 もっと別の人生があったのではないかと、気持ちを吐露するところはぐっときました。 エーちゃんみたいな人が実際にいたらなぁ。 ![]() 『 月と蟹 』がおもしろかったので、もう1冊。 直木賞候補になった作品。 読んだ後知ったのですが、すでに映画化され、今秋公開予定だそう。 タケさんが阿部寛で、テツさんが、村上ショージ! 友人の借金の保証人になったことから、人生の歯車が狂い始め、一番大切な家族までを失った主人公武山。 ヤミ金業者への返済ができなくなり、彼らの仕事、取り立てを手伝うようになり、重すぎる十字架を背負って生きている。 絶望し、詐欺師になって7年。 ある日、自分をだまそうとした男、テツさんと知り合い、コンビを組んで、小さな詐欺をしながら細々とした共同生活を始める。 そこに女の子が転がり込んできて…。 集まった奇妙な仲間たちと繰り広げる大団円。 あっけない作戦の失敗に、???たくさんの疑問符がついたあとの、あのラスト。 う~ん、そうきたか。 無理があるといえばあるけれど、いいじゃないか。 さわやかな読後感。 もちろん、詐欺が生業だなんてと毛嫌いしてたら、読めないだろうけれど。 ちいさな疑問や、序盤の布石が次々に明らかになるところは、やはり痛快。 おもしろかったなぁ。 ![]() 辻村さんの作品は、『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ』に続いて2冊目。 物語、ストーリーに引き込まれるおもしろさ! 人生の最大イベントといってもいい、結婚式そして披露宴。 そのハレの日を演出する、ウェディングプランナー多香子。 そして、11月のある大安の日、舞台となるホテルで式を挙げる4組のカップル。 互いを意識しながら生きてきた美人姉妹が、式当日に企てた計画とは。 大好きな叔母の結婚に不安をもつ小学生の甥っ子。 多香子の天敵、クレーマーの新婦。 最悪の客である彼女の結婚式を無事に終わらせることはできるのか。 誰か式を止めてくれ! 追い込まれた新郎、彼が手に持つのは…。 それぞれの思惑が交錯し合い、同時進行する物語。 映像が目に浮かぶよう。 今月、ちょうどNHKでドラマ化されるみたいです。 ![]() 「十年後の卒業文集」「二十年後の宿題」「十五年後の補習」の3つからなる短編集。 実験的な作品で、物語を手紙のやりとりだけで成立させるというもの。 メールや携帯電話が発達した現代。 文通の必要性が必ずしもないところが、ちょっと苦しいところ。 それでも、うまくできてるなと思ったところも。 ![]() 神様のカルテ、続編。 続編って、どうなのかなと思ったけど。 前回より、もっとよくなっていました。 山岳写真家、可憐でつつましく、でも逞しい、妻のハルさん。 男性の理想なんだろうなぁ。 実際には、こんなに自分の感情と夫への愛情をコントロールできる人はなかなかいないんでは。 わたしとしても、あこがれの女性。 彼女の悲しい過去なんかも、さらなる続編へと続きそうな予感。 過酷な環境の中、地域医療に奔走する内科医、一止。 東京の医大の同期が、春から赴任してくるのだが。 数少ない友と心のつながり。 べたべたしない、でも心から思いあっている男の友情が描かれています。 素晴らしい上司との永遠の別れ。 それぞれの夫婦の在り方と絆。 残していく人、残される人。 ![]() 魅力的な登場人物、ウイットがきいた会話、いろんなところに周到に用意されたさまざまな伏線。 終盤にかけて、それがすべてつながっていく爽快感。 主人公由紀夫は、ごくふつうの高校生。 ちょっとかわった家族構成を除けば…。 ギャンブル狂の鷹、女たらしの葵、肉体派の勲、知性派の悟の4人の父親と、マイペースな母の6人家族。 そんな由紀夫が、友達のピンチに出くわし、たすけたことで、ある事件に巻き込まれていくのだが。 アヒルと鴨のコインロッカーと重力ピエロ、やっぱりこの2冊がいちばん好きだなぁ。 ![]() 『家日和』の続編。 それぞれの家族の抱える、大なり小なりの問題。 あまりに甲斐甲斐しい、新妻に息苦しさを覚え、毎夜、喫茶店で時間をつぶす夫。 地方出身者同士で結婚した夫婦、初めての帰省。 突然、UFOがみえる!と言い出した夫。 会社で、人が好いゆえに、追い込まれた立場にいると知った妻は…。 両親が離婚するかも…。 突然のことに戸惑う高校生の娘。 ベストセラー作家になった夫に置いて行かれたような気分の妻。 ランニングに目覚め、東京マラソン出場へ。 などなど。 家日和より、ちょとだけ深刻?になったようなそれぞれの家族の問題。 どれも、あたたかな奥田さんの視点で描かれ、読後感がとてもいい。 なにはともあれ、家族っていい。 いっしょにいられるってなんて素晴らしいんだろう。 ![]() 作者が映画製作と同時進行で書き上げた小説。 映画はまだ観ていません。 もともとは女優さんだそう。 表題にある通り、冬子29歳は、妊婦。 ただ、月が満ちても、おなかの子は、まったく生まれてくる気配がないのだ。 夫との関係。 夫に対する感情。 愛情とか一緒にいることの意味がはかれない冬子。 また夫徹も、そんな冬子をどうあつかっていいのか、時に気味悪くさえ感じてしまう。 妹、妹の彼、産婦人科医の海、冬子の母、祖母。 独特の価値観、家族の空気。 冬子の言動は、こちらからすると理解しがたいことは多々あるんだけれど。 その切実さと真剣さは伝わってくるものがあって。 こんな世の中に、子供を産み落とすなんて!という考え方。 そして、おなかの子と母はひとつであるような不思議な一体感。 もう歩けるくらいになったおなかの子が、腹の中で動き回るたび、内臓が暴れ、口から鉄の味がする…とう描写はなんともリアルでぞっとしました。 このまま生まれてこなかったら…という恐怖。 ファンタジーでもなんでもなく、もう歩ける2歳の男の子が、血みどろで生まれ、パパ!と走り寄る場面はすごかった。 わが子と対面した冬子や徹の変化。 親になるということを考えさせられました。 おもしろい作家さんだな。 ![]() ずっと気になって読んでみたかったモノ、母の本棚で見つけました。 春から夏、秋、冬…。 うつりゆく季節に思うこと。 氏の親しい人、家族、恩師と想い出や、時には時事問題、若者への叱咤激励、ゆとり教育、叱る大人の重要性・・・などなど。 かと思えば、酒とギャンブルの日々も。 あたたかく、知己やウイットに富み、ときどき大人の茶目っけもありつつ、読ませてくれます。 好きだったのは、大人の仲間入りをする君たちへ、大人の身だしなみについて、墓参りの作法。 大切な人の墓、その寺の周辺、そこから見える景色・・・。 そういったものを、こころに留め置いて。 命日の朝、遠く墓参に向かえなくとも、目をつぶり、その人とその墓のことを思い出し、手を合わせる。 昔の人は、そううしたものですよ、と書いてあり。 日ごろ、なかなか墓参できないもやもやが晴れていくようでした。 そして、本を開くまで知らなかったのですが、巻末の文章。 故夏目雅子さんとの出会いから別れまでの日々がつづられています。 25年間の沈黙、今の心境、奥様への気遣い。 そして、愛する人との別れ、時間だけが解決してくれるということ。 氏が最後の最後に引用された、チェチェンの老婆のせりふ。 『 あなたはまだ若いから知らないでしょうが、悲しみにも終わりがあるのよ 』 ![]() 小学生日記、で鮮烈な印象を残した華恵さん。 今は、ちょうど二十歳なのかな? このエッセイは、17歳のころ書かれたもの。 何気ない高校生の日常を綴っているんだけど、その感性、言葉選び、ほんとに17歳?と思ってしまう。 甘酸っぱくて、懐かしい日々を思い起こしながら、読みました。 華恵さんの家族、特に母親との会話はおもしろくて。 垣間見えるこの個性的かつ魅力的なお母さんの影響もたくさん受けてるんだろうなと想像しました。 巣鴨に祖父母に会いにいく話、ちょっと大人になったガキ大将との話、同級生とのモネ展や母との谷中墓地の散歩。 どれも情景が浮かび、ほっとこころが和むものがたりでした。 ![]() 札幌、ススキノ。 路地を入ったところにある小さなスナック、チャオ。 同窓会の3次会に流れたのは、男女5人。 悪天候で遅れた飛行機のせいで、同窓会に間に合わなかった、田村を待っている。 40歳、もう若くはないけど、引退という歳でもない。 マスターの目線と、集まった5人のそれぞれの現実。 孤高の小学生田村少年の想い出が語られる、第1話から、ストーリーに引き込まれていきます。 『どうせ死ぬんだから、今、生きているんじゃないのか』 田村はまだか、それにしても、田村はまだか! 終盤に向けて、読んでる自分もいっしょになって田村を待ち焦がれていることに気づく。 そうくるか!という展開。 最後は、ぐっときました。 軽快な語り口、シニカルな表現、女性作家なのに、いわゆるおっさんとかサラリーマンの悲哀がこんなにも伝わってくるなんて。 また好きな作家さんが増えました。 ほかの作品も楽しみ! ![]() 講談社児童文学新人賞を受賞した作家、初めて読みました。 主人公は小学5年生の目立たない、静かな、家でも学校でもいつもひとりぼっちの男の子。 同世代のこどもたちとどう付き合っていけばいいかもわからないまま過ごしてきた。 母子のふたりの暮らしには、いつも、もしお母さんが居なくなったら…という不安が付きまとう。 5年生になった新学期、押野という少年との出会いが、それまでの少年の世界をくるっとかえてしまう。 えだいちという、生まれて初めてのニックネーム、三丁目の公園にあつまる野球仲間。 なにげなく迎え入れ、ペースに巻き込んでくれた押野、そして公園にあつまる仲間たち。 そして、自分にはおじいちゃんがいたんだという事実。 父親と疎遠になっていた母が、転職をきっかけに、転校を嫌がったぼくをおじいちゃんに預けることに決めた。 100年以上も歴史のある広い庭付きの平屋。 早朝5時に開く、雨戸の大きな音。 庭の水巻き、縁側で食べる、すいかや糠漬け。 冷静な中にも優しさが伝わる、言葉少なな祖父と、ちょっとずつ距離をつめていく様子が、ほほえましい。。 夏の風景が、今にも目に浮かぶような。 大人になった少年のエピローグ、人生は劇的ではない。 劇的ではないけれど、それでも人生には転機みたいなものがある。 そんな11歳の夏がいきいきと、少年のこころに寄り添って描かれています。 さわやかで優しい読後感。 ![]() ばななさん彼女の息子くん、チビちゃんとの暮らしを綴ったエッセイ。 幼稚園時代だから4~5歳くらいのエピソードが中心。 チビちゃんが紡ぎだす言葉の数々が、ほんとにいい! なんともせつなくなってしまいます。 こんな大人っぽいことも…と思ったり、やっぱりこどもらしいなと思ったり。 なんでもない日々が、かけがえのないものだと、ばななさんとチビちゃんが改めて気づかせてくれます。 彼女の目線、チビちゃんとの日々を掬い取る誠実さに、何度もじぃんとします。 手元に置いて、何度も読み返していたい本。 そして、これから、もっともっとおしゃべりできるようになるわが息子との日々も、楽しみなりました。 ![]() 『家族』を綴った、短編集。 ①アジサイ ② 父の背中で見た花火 ③せめて一矢 ④ママ、みーつけた ⑤神様のげんこつ ⑥それでも鳥は空を飛ぶ ⑦ 蜜柑とこたつ ⑧車輪の空気 タイトルから、いろいろと想像が湧く感じ。 リストラ、うつ、居場所のない父、離婚、育児放棄、嫁姑…。 現代社会のひずみを描きながらも、最後にはどこかほっとさせてくれる、希望がみえるストーリーばかり。 ひとつひとつ、映像が浮かぶような。 放送作家出身なのもうなずけます。 ![]() 直木賞受賞作、初めて読んだ同世代の作家。 海辺の小さな町、10歳の少年たちがそれぞれに抱えたこころの重たい荷物、そして秘密の遊び。 子供特有の残酷さと危うさ、純粋さ。 ヤドカリを火であぶる危ない遊びは、いつしかヤドガミ様が願いを叶えてくれるという儀式へ…。 父を失い、自分だけの母ではなくなっていく、女としての母に苛立ちと不安を持つ慎一。 また母を失い、主人公慎一と同じように、じぶんだけの父ではなくなっていく、男としての父に寂しさともどかしさを抱える少女。 優しかった両親はもういない、毎夜、繰り返される暴力に怯え、逃げ場のない春也。 抱えるモノの大きさは比べようもない。 誰のせいにもできない、自分自身の環境。10歳の抱える孤独。 その閉塞感と、子供独特の視点と関わり合い。 後半に向けて、どんどんページをめくるスピードがあがっていきました。 一気に読ませるうまさ。 特に、慎一の心理描写はすばらしく、どうしても、彼の気持ちに寄り添って読んでいた気がします。 最後は、少しだけ救いがあったと思いたい。 まだまだ、ほかの作品も読んでみよう。 ![]() テレビ局で働く俊平。 徹夜や出張続きの不規則な勤務、物理的に恋人と会う時間も作れず、女性が離れていっても、後を追うことはなかった。 仕事への情熱と恋愛との兼ね合い。 そんなとき、偶然知り合う、耳の不自由な女性、響子。 唇の動きを読ませるためゆっくり話したり、数百という短いメモのやりとりで距離を縮めるふたり。 彼女の静寂が、ある意味恐怖に感じることもある俊平。 静かな、爆弾。 自分の感情をダイレクトに伝えられないもどかしさ、時々感じる、果てしなく遠く思える彼女との距離感。 そんな恋愛中の不安定な気持ちや感情の揺れ、すれ違いが男性の目線で描かれているのでおもしろい。 時に身勝手なのは、男女とも同じだけれど…。 失いそうになるとその大切さに気が付く。 ひさしぶりに、恋愛小説!に浸れました。 ![]() 東京浅草近くの下町で育った佳代。 中学の卒業前に、突然両親が失踪してしまう。 まだ小さな弟を抱え、卒業と同時に、小学校の給食室で働きながら、必死に生きてきた佳代。 30代を過ぎて、ある決心をして仕事をやめる。 それは、移動調理屋をしながら、全国をめぐり、両親の足跡をたどること。 如何様にもにも調理いたします。との看板をかかげ、ちいさなワゴンに備え付けられたキッチンで、調理屋をする佳代。 名付けて、佳代のキッチン。 両親の行方探しの手段として、始めた移動調理屋には、さまざなな事情を抱えた人がやってきて…。 不思議な出会いに導かれ、両親の足跡を追って、遠く北海道までたどり着く佳代。 70年代の若者が追い求めた理想郷、コミューンの一員だったらしい両親。 彼らの過去を知るたび、つらい思いをする彼女。 両親とかかわった人たちとの出会い、彼らの話を聞くたびに、描いていた両親象、憎しみの気持ちに少しずつ変化があらわれて。 捨てられたと思ってきた自分は、彼らを許すことはできないけれど、受け入れることはできるかもしれない、そう思えるように。 結末はあっけない。 でも、それでいいような気がしました。 オリジナルな料理の描写も細かくて、おなかがすく感じ。 これから、ちょっと楽しみな作家さんです。 ![]() 下町のちいさなハンバーグ屋、ジュージュー。 そこに集う人々。 ジュージューの娘、美津子の視点で描かれる優しい物語。 母を失い途方にくれる父とともに、なんとか店を続けるみっちゃん。 3代目を引き継ぐのは、かつて彼女が死ぬほど愛した人、今は兄弟のような親友のような、しんちゃん。 父と母が引き取って育てた進一との恋、そして失った命と悲しい結末。 それでも、いっしょに店をやっていこうと決めたふたりの葛藤と歴史。 ちいさなちいさなハンバーグ屋に集う人たちの営みの中に、それぞれの喪失、悲しみがひっそりあって。 それでも、毎日は続いてて、人は動物を殺し、ハンバーグにして命をいただいて生きていく。 美津子と彼女を取り巻く小さな世界の中に、ばななさんの伝えたいことがたくさん詰まっていました。 彼女のメッセージは、一貫してるなぁ。 最近では、いちばん好きな作品かも。 さらっと読めるんだけど、ひっかかる言葉がたくさんあって。 またじっくり再読したいです。 ![]() 銀色夏生さんの詩集、高校生の頃によく読んでいました。 詩人って、なんとなく浮世離れというかちょっとはかないイメージとかあるけれど。 このエッセイを読んで、なんてあけっぴろげな人なんだ!とびっくりしました。 自分がどう思われてしまうか、とか、こんなこと書いたら、ちょっと首を傾げられるんじゃないかとか。 そういう恐れ?みたいなものが、ほとんどない感じ。 逆を意識してるのかもしれないけれど。 最近、日記風エッセイに惹かれています。 実生活ほど、おもしろく、ためになるものはない、なんて。 つれづれノートは1991年にスタートしてから、数年のお休みを経て、今は最新20がでてるそう。 銀色ファンの友達に、ぜひにと勧められ、①から⑯まで集めたところ。 ばらとおむつは、銀色さんのお母様(しげちゃん)が脳梗塞で倒れ、 それを懸命に介護するお兄さん(セッセ)の介護通信(ほかの兄弟への近況報告)を中心に、銀色一家の日常をつづったもの。 このセッセさんが、おもしろくて。 本人がいたって真面目なだけに、余計に。 冷たいと言っていいくらいの、妹である銀色さんのつっこみがさらに、彼の個性を際立たせてると思う。 それでも、人生はつづいていく。 いろんなことがあって、淡々と受け止めて、でもちいさな幸せやにやっとしてしまうことをちゃんと拾っていく。 その視点はやはり独特なものがあって。 だからこそ、銀色さんの日常に惹かれる人たちが多いんだろうなぁ。 つれづれを始めから、だ~っと一気読みするのが楽しみ。 ![]() 御年83歳になられる田辺聖子、お聖さん。 彼女の小説の復刊が相次いでいます。 仕事に恋にと生き生きと輝く乃理子を描いた3部作を読んだのは、もうずいぶん前。 この物語が30年以上前のものだとは思えない!という印象を持ちました。 田辺さんの半生、作品群がインタビューを元に紹介されています。 女性ならではの処世術、女の心得。 押しつけがましくない、女史の軽やかな関西弁が優しい。 心に残ったのは、生きるって袋を大きくすること、という言葉。 …この世で生きることはすべてが解釈の仕方次第だから、中身をたくさん持ってて、 ああも考えられる、こうも考えられるって人が生きやすいのね。それで、ぺしゃっとなったときに、 人に頼らないで立ち直れるってことが大事です。 本当にそうだなと思います。 いろんな経験を積んでいるからこそ、ある程度のことではたじろがないでいられるんだろうと。 経験不足は、こうやってちょっとでも、誰かが心を込めて書いた文章を読むことで補おうとしているのかもしれないな。(笑) ![]() どこにでもいるような10歳の女の子、紀子。 彼女の青春が高校卒業まで描かれる。 小学生の女の子同士のグループでの処世術、お誕生会に卒業旅行。 そして、初恋。 中学校に入ると、少し、不良グループにも興味がでてきたりして。 大人がなんとなくイヤになる時期、家族との微妙な関係。 思い込みが突っ走る恋とすれ違い、勘違い。 本当に、誰もが経験する甘酸っぱい記憶やほろ苦い記憶を、女子の目線で生き生きと描いています。 大人になった今読み返すと、この思春期と呼ばれる数年間って、なんて生きにくかったんだろうと。 なんだかわからないけど、心にあるモヤモヤとか。 狭い学校や教室という環境の中で、いろんなことを我慢して、折り合っていかなきゃいけない感じとか。 紀子の切ない失恋は、なんだかほんとに、滑稽なんだけど、悲しくて。 すごく好きな物語でした。 エピローグもよかったなぁ。 ![]() どこか不器用な男女、失った恋をつづった短編集。 角田さんの描く登場人物って、なんだかこう、ちょっとけだるいような、何かをあきらめてるというか 冷めている感じの男の子や女の子が多い感じがする。 ああ、こういうことあるある…あったあった…という、心象風景を描き出すのが本当にうまい。 情景が浮かんでくるのだ。 個人的には、同棲していた部屋に忍び込んで、ジミヘンのポスターを取り返そうとする女の子のハナシが好きだったなぁ。 ![]() 高山なおみさんを知ったのは、ずいぶん前に終了した料理番組デリデリ・・・で。 おもねったところのない、でもさわやかとも違う、独特の雰囲気のひとで、すきだなぁと思っていました。 ときどき雑誌でエッセイを読んだことがあったのですが、まとまったものを読んだのは初めて。 もっと早く読んでおけばよかったぁと悔しくなるほど。 言葉の選び方が好き。 日記だからもちろん個人的なものなんだけど、まいにちの積み重ね、特に食べ物が人をつくっていくんだというのを改めて考えさせられる。 夫、夫のこどものりうちゃんとの関係性もいい。 なんともいい距離感にあこがれすら覚えるほど。 日々ごはんは⑫で、最近終了してしまったらしい。 いまから⑫まで、少しずつ読み進める楽しみが増えました。^^ ![]() 町田康さんが猫との普段の暮らしをつづったエッセイ。 猫にかまけて、猫のあしあと、に続く第3弾、大好きなシリーズです。 集まってきた猫の数が10匹近くになり、引っ越しをする町田夫婦。 相変わらずの町田節、猫の下僕のような彼。 くすくす笑ってしまいます。 ![]() 伊坂さんらしい、軽快で楽しいセリフのやりとり、ところどころにグッとくるエッセンスがちりばめられています。 『あのバス』に乗る日が迫る、星野一彦。 それまでに、5股していた個性的なそれぞれの女性のところへ別れを告げに行くのだが…。 星野くんの飄々としていて、でもにくめないキャラクターに、ついつい、5股も仕方ないかなと思わせてしまう筆力。 そして、まるで死神のように付き添う『繭子』。 この強烈キャラは、どうしても、マツコ・デラックスさんを想像してしまい、頭の中で、しゃべったり怒号したり、暴れたり。(笑) 結局、あのバスとは?その行先は?星野はどうなるの? 読者にその後を託すカタチで終わってしまいます。 う~ん、気になる。 バイバイ、ブラックバードをより楽しむために、という本がでているので、読んでみよう。 太宰の絶筆、未完のグッドバイから、インスピレーションを得たそう。 ![]() ある日、夫が突然家をでてしまい途方に暮れるまりあ。 出生に暗い過去を持つまりあにとっての、唯一の居場所だった、彼と自分の家庭、それも消えようとしている。 夫と旅行した思い出の地、南の島へと向かう彼女。 もしかしたら、そこにいるかもしれない・・・と一縷の望みを抱き、彼の姿を求めながら、あてもなくふらふらと歩く。 そこへ、話しかけてくれたひとりの女性。 鶴子は、ごはんでも食べていきな~と、彼女の助産院へ招くのだが。 鶴子との衝撃の出会い。 つるかめ助産院で働く魅力的な人々。 そして、まりあ自らに宿っていたいのち…。 登場する女性たちが、それぞれに抱える、親との哀しい過去。 それが、いのちが誕生する現場に立ち会うことで、それぞれに悲しみを受け入れ、いま、生きている、産んでくれた人がいる、 そのすばらしさにシンプルに感謝できるようになっていく過程。 まりあの出産シーンは、ほんとうに自分も追体験する感覚で読みました。 よかった、とても。 島の自然、とくに、助産院ででてくる食事風景が大好きで。 文字を追うだけで、おなかがすいてくるほど。
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