手のひらの砂漠 唯川恵

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どこから、わたしたちは間違ってしまったんだろう・・・。
幸せだったはずの結婚生活、わずか2年と少しで、身一つ、裸足で結婚生活から逃げ出した可穂子。
夫の暴力に麻痺し、慣らされ、それでも死の間際に、なんとか逃げ出した先は・・・。
同じくDVで苦しむ女性たちのために活動する、女性たちに出逢い、なんとか生活を立て直そうとする可穂子。
しかし、いつも夫の影におびえていた。
執拗に、可穂子を追い回す夫。
不条理には、不条理を。 彼女の出した結論とは・・・。
考える力をなくしていく、暴力にさらされる女性の心理、逃げ出した後の後遺症など。
重いテーマ、主人公といっしょに切羽詰った気持ちにさせる感覚。
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# by chocoeri-books | 2013-07-12 08:58 | 小説(女性作家)

ハピネス 桐野夏生

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都心近郊のタワーマンション。
中に浮いたような、『理想の』住まいに暮らす、さまざまな家族たち。
同じ年くらいの小さな子を通じて知り合った、いわゆるママ友。
夫の不在と離婚通告を隠し通し、幸せな妻、また母を演じる主人公。
生活レベル、こどもの習い事、お受験、夫婦関係・・・。
透けて見えるそれそれのママたちの後ろにあるもの。
みえるものとみえないもの。
まるで1本のドラマをみているような臨場感。
ラスト、主人公の夫は帰ってくるが・・・。 不満もしこりも残るが、それを乗り越えるのも夫婦なのかもしれない。
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# by chocoeri-books | 2013-07-12 08:49 | 小説(女性作家)

くちびるに歌を 中田永一

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長崎県五島、小さな島の中学校合唱部。
甘酸っぱくて、くすぐったくて、でも切なくて、胸が熱くなる。
がむしゃらな姿を見せるには、ちょっと気恥ずかしくておどけてしまったり、
自分でもわからないモヤモヤをもてあます感じとか、なつかしい感覚。
拝啓、15の君へ。 15年後の君はどんな大人になっていますか?

しっとった? 僕、長谷川さんのこと、好きとよ。 なじみのある方言があたたかくて。
サトルの告白がなんとも言えず好き。
ラストのにくい演出には、やっぱり泣かされました。 よかった。
きっと映像化されるだろうな。
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# by chocoeri-books | 2013-07-05 21:32 | 小説(男性作家)

パンとスープとネコ日和 群ようこ

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突然の母の他界でひとりきりになったアキコ。
母が営んでいた古い食堂を改装、50歳過ぎての再出発。
愛猫たろちゃんに癒される日々。
好きなことをするための大きな代償。 出逢いの大切さ。 女ひとり生きていく覚悟。
たんたんとしたなかにも、アキコの心情が染み入ってきました。
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# by chocoeri-books | 2013-07-05 21:17 | 小説(女性作家)

杏のふむふむ

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モデルで女優の杏さんのエッセイ集。
もの、こと、ひと。 さまざまな出逢いについて。
飾らない言葉に、好感が持てました。
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# by chocoeri-books | 2013-07-05 21:12 | エッセイ(女性作家)

かっこうの親 もずの子ども 椰月美智子

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母子ふたりだけで生きていくと決めた統子。
母親としてのさまざまな苦労と、同じだけの喜び。
血のつながりって、なんだろう。
こどもを持つ意味ってなんだろう。
不妊治療、シングルマザーになること、夫婦としての生き方、そして・・・。
読後感はさわやか。
好きな作家さんです。 また新作が楽しみ。
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# by chocoeri-books | 2013-07-05 21:10 | 小説(女性作家)

沈黙のひと 小池真理子

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老い、そして病・・・、手足も動かせず言葉もままならなくなっていく父親。
娘である自分と母を捨てた男。
葛藤の中で突然やってきた別れ。
晩年を沈黙の中に過ごした父が書き残したものとは・・・。
親と子、夫婦、誰にでもやってくる老いと病、そして別れ。
重たいけれど、小池さんの筆力でぐいぐいと引き込まれ。 よかったです。
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# by chocoeri-books | 2013-07-05 21:03 | 小説(女性作家)

ノエル 道尾秀介

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哀しく優しいものがたり。
どうしようもなく暗い結末を覚悟した矢先、次の展開に息をつく。
童話の世界が、それぞれをつなぐエピローグを読み終わるとあたたかな気持ちが広がりました。
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# by chocoeri-books | 2013-07-05 21:00 | 小説(男性作家)

舟を編む 三浦しをん

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言葉を愛し、真摯に向き合い、十数年かけて一冊の辞書を創りあげていく。
その編集部の面々とそれを取り巻く人々の物語。
何においても情熱を持って取り組むことの大切さ、その過程にこそ、意味がある。
言葉を持つ人間に生まれて、本当によかった。
辞書ともっと身近に付き合って、日本語(言葉)に敏感な人でありたい、そう思わせてくれる本でした。
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# by chocoeri-books | 2013-07-03 21:21 | 小説(女性作家)

明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち 山田詠美

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家族の喪失、そして再生の物語。
家族、血のつながり、信頼、、死、それに伴う喪失感、恋愛、母と子、妻と夫。 
ひさしぶりの、詠美さんの文章。 読みやすくさらっとしているようだけれど。 後から後から、じわじわっとくる表現がここかしこに。
父の浮気、離婚を経て、ふたつの家族がひとつになった、澄川家。
美しく、明るかった母が、家族をつなぐ要、誰からも一目置かれる存在だった聡明な長男を事故で失ってから、徐々にゆがんでいく。
連れ子である次男、長女、澄川家に新しく生まれた次女。
4人の母であるはずの彼女は、もはや長男の面影だけにすがっているだけの日々を送る。
長男澄夫の死を、家族それぞれが受け止め、乗り越えていける日は来るのか。
きょうだい、それぞれの目線で描かれた章ごとに、家族の物語は進む。
最終章、『皆』。 ラスト、好きだったなぁ。 澄生はあそこにいたんだろう。
失ったと思った人でも、その思い出とそれに連なっていく時間の中では、生き続ける。
言い古されきたような、気づかされたような。
『学問』の次くらいに好きな小説。
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# by chocoeri-books | 2013-05-26 10:21 | 小説(女性作家)

和菓子のアン 坂本司

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高校を卒業して、次々と進学していく同級生を尻目に、特にしたいこともない梅本杏子。
自分にちょっと自身がなくて、ぽっちゃりした和菓子が似合う、商店街で育った女の子。
そんなアンちゃん(あんこちゃん)が、ひょんな出会いから、デパ地下の和菓子屋に勤めることになって。
個性的な従業員たち、ミステリアスなお客さんたち。
和菓子の歴史、日本古来の風習、それにまつわる言葉、そして赴き深い言葉遊び。
和菓子にからめた、人情ミステリーというところ。
読みやすく、軽い文体。 あっという間に読めます。 
読んでると和菓子が食べたくなる。 そして上和菓子の美しさに、ショーケースにたたずむ時間が増えました。^^
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# by chocoeri-books | 2013-05-26 10:20 | 小説(女性作家)

永遠の0 百田尚樹

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永遠の0、0とはゼロ戦、世界大戦下、アメリカに恐れられた優秀な日本の戦闘機。
このゼロ戦にのるパイロット、宮部。 
国のために命を投げ出すということが当たり前のように言われた時代、彼は『臆病者』と呼ばれていた。
なぜなら、必ず生きて帰ると公言して憚らなかったから。 愛する妻と娘のために。
血のつながらない祖父のことを尊敬している健太郎。 
姉に引っ張られるように、顔も知らない祖父のことを調べ始める。
生き残った関係者に話を聞くたび、次第に、宮部久蔵という人物を大きく感じ始め・・・。
あんなに生き残ることに執着していた祖父が、なぜ、終戦間際に特攻で命を散らしたのか。
最後の最後でそれが明かされる。 涙が止まらなかった。 そういう愛し方もあるのかな。
でも妻の想いで読んでいるとそれでも生きて帰ってほしかったと思ってしまうけれど。
戦況や軍部の在り方など、取材力はすごいと。
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# by chocoeri-books | 2012-11-30 11:30 | 小説(男性作家)

ヴァニティ 唯川恵

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この感じ、なつかしくなりました。
唯川さんの作品、学生や働きだしたころ、よく読んでいたなぁ。
女の数だけドラマがある。 仕事と恋愛、結婚への迷い、浮気、不倫、出会いと別れ、嫉妬、疑い…。
みんなただただシアワセになりたいだけなのに。
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# by chocoeri-books | 2012-06-18 14:35 | 小説(女性作家)

晴天の迷いクジラ 窪美澄

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ふがいない僕は・・・が、好きだったので、彼女の新刊を。
小さなデザイン会社で働く青年。 忙しさに追い詰められ、心療内科で処方されたクスリが手放せない。
苦労してデザイン会社を興し、ただただ突っ走ってきた中年女性。
そして、母親の重すぎる愛情に押しつぶされそうな少女。
3人が出会い、湾に入り込んで瀕死のクジラを見に行くことのになるのだが・・・。
ひとりひとりのそこに至る状況や心情が細やかに描かれ、ラストへ。
置かれた場所でもがくしかない、彼らなりに懸命でも、思った方向に進んでいけないもどかしさ。
生きるということ、働くということ。
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# by chocoeri-books | 2012-06-18 14:24 | 小説(女性作家)

なくしたものたちの国 角田光代

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松尾たいこさんのイラストと、そのイラストの世界をモチーフに角田光代さんが小説にした、『 なくしたものたちの国 』 。
前作 『 Presents 』 、も大好きだったのですが、この本はもっと好きでした。
主人公・成子(ナリコ)の少女時代から40代くらいまでを描く短編集。
あんなに大切にしていたのに、いつのまにかなくなったモノたち、そして、別れるしかなかった大好きな人たち。
でも、なくしたんじゃない、なくしたものたちの国があって、みんなそこに移動しただけ。
いずれはわたし自身もなくなって、そのなつかしいものたちが待っている場所に帰ることができるんだ。
ふんわりとした大人のファンタジーでありながらも、メッセージはしっかりと。

最初の一遍 『 晴れた日のデートと、ゆきちゃんのこと 』  。
8歳の夏まで、世の中のすべてのモノたちと話ができた成子。 不安いっぱいのまま、小学校に入学。
校舎の裏にある動物小屋にいる、白やぎのゆきちゃんに出会い、ふたりだけの秘密の会話をすることで、新しい世界にもなじんでいけるように。

いつもママがわたしのこと心配しすぎて、スカーフでほっかむりして、こっそり、ついてきてるみたいなんだけどね、
わたし、知らないフリしてあげてるのよ。 と、成子。
あらぁ、だいじょうぶよ~そういうのが、ぜ~んぶ、なつかしくなるんだから。 と、ゆきちゃん。
白やぎと小学校1年生の女の子の、ひとときの夢のような時間とやりとり。 
すべてなつかしくなるときがくる、ってところになんだか、じ~んとしてしまいました。
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# by chocoeri-books | 2012-06-03 20:33 | 小説(女性作家)

曾根崎心中 角田光代

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300年前、江戸で実際に起こった心中事件を、近松門左衛門が人形浄瑠璃にした名作古典、曾根崎心中。
元禄の時代、悲しい過去を背負った遊女、お初。
恋なんて、得にもならないものは絶対にしない。 とにかく、この場所を出る、そのことだけ考えて生きてきた。
しかし、徳兵衛との出会いで、初の世界は一変する。
狂おしいほどの徳兵衛への恋心が、角田さんの美しい文体で描かれていきます。
心中という究極の恋の成就へと、突っ走るお初の心情が、ひりひりと伝わってきて、一気に読んでしまいました。
直前に徳兵衛を疑うお初の気持ち、でもそれでもいいという切り替え。 原作にはなかったと知りました。
徹底的に女性側の視点に立っているからこそなんだろうな。
古典をこういうふうによみがえらせてくれる角田さんの筆力。 ほかの古典も読んでみたい。
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# by chocoeri-books | 2012-06-01 14:25 | 小説(女性作家)

切羽へ 井上荒野

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九州の小さな離島で暮らすセイ。 島にたったひとつの小学校の養護教諭で、画家の夫と静かな生活を送っている。
春、島にやってきた新任教師、石和。 無骨でそっけなく、何を考えているかわからないような男。
何気ない会話、さまよう視線、目で追う後ろ姿・・・。
夫のことを、夫との静かな生活を愛しているのに。 このもやもやとした感覚は何だろう。
簡単に恋とは言えない、そのキモチの揺れ。
でもその微妙のキモチの揺れさえも、夫、そして同僚にも気が付かれている、でも知らないフリをするそれぞれが、意識的に、無意識的に。
淡々と、静かに物語がすすむけれど。 方言の使い方がいい。 石和と話すときだけ、標準語になるのが効果的で。
セイのキモチの揺れ、島の風景と相まって、せつなく描かれます。
これ以上進めない場所、それが切羽。 ラストシーンは、あっけないような感じがするけれど。
そこがリアリティがあった、女性だからこそ描けたのではと思います。
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# by chocoeri-books | 2012-06-01 14:11 | 小説(女性作家)

ふがいない僕は空を見た 窪美澄

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飄々とした印象の、高校1年生の卓巳と、その周りの人々の群像劇。
それぞれの中編がラストへと続くいていく。
コミケで出会った主婦あけみと、欲望のままに体を重ねる卓巳。 16歳の性と迷える感情。
あけみは、みずからをデブで変態で不妊の主婦と自覚、姑の執拗な要求に、婦人科に通っている。
夫が出て行った後、助産院を開業し、自宅で赤ん坊を取り上げている、卓巳の母。
卓巳をいちずに想う、七菜、生まれ落ちた環境で必死に戦う同級生田岡。
魅力的な登場人物たち。
田岡くんのハナシ、『セイタカアワダチソウの空』は、特によかった。
生きていくことは、どうしようもなく、ふがいないことばかり。
でも、読後感はさわやか。 命の誕生、前向きな卓巳の母に、背中を押してもらえる。
この作品がデビュー作の著者。 これからが楽しみ。 映画化も決定しているみたい。
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# by chocoeri-books | 2012-05-22 12:03 | 小説(女性作家)

放蕩記 村山由佳

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半自伝的小説、と銘打ってありました。
38歳の女流作家、夏帆。 母との幼い頃からの関係性のゆがみを、長年抱えながら生きている。
母の顔色をうかがいながら、精神的に押さえ込まれていた少女時代。
父の浮気に悩み、女の嫉妬むき出しで、妹にではなく自分にだけ、愛人や父への恨みつらみをせきららに聞かせてきた母。
いつでも、女同士として意識し、母性というものを母から感じたことがないまま育ち、母の呪縛から逃れられない彼女のうつうつとした感情。
娘の視点が主なので、実際のところはわからないけれども。
生まれた環境、こんな母のもとに生まれることになったならば・・・と思うところはありました。
たとえ母と娘、親子であっても、一個の人間同士だと思うには、幼い少女には過酷すぎる…。
大人になり、自分で判断できるようになったと思えるようになったとしても、
ひとつひとつのことに、これは母との関係性が影響してるのかもと思ってしまうのは仕方のないことなのだろうな。
娘として読むのも母として読むの、うつうつとしてしまう。
最後にすこし光はみえた感じが。 最終章の父と兄のせりふですくわれたとみるか、ちょっと都合がいいとみるかは意見が分かれるかも。
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# by chocoeri-books | 2012-05-17 14:42 | 小説(女性作家)

県庁おもてなし課 有川浩

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なんにもないけんど、・・・光はある!
高知県庁に実在する 『 おもてなし課 』 、を舞台に、高知県を観光で盛り上げようとする若者たちの物語。
高知県出身の作家の、愛郷心とエールが込められています。
若手職員・掛水の奮闘ぶり、アルバイトの多紀ちゃんとのやりとりと恋のゆくえ。
掛水をとりまく、魅力的な登場人物たち。
民間感覚といわゆるお役所仕事の狭間で悩み、もがい、少しずつ成長していく主人公。 さわやかな読後感。
まさにストーリーテラー、有川さんという感じ。 1本の映画を観ているよう。
さくさくと読めて楽しい、エンターテイメント作品。
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# by chocoeri-books | 2012-05-14 13:54 | 小説(女性作家)

だれかの木琴 井上荒野

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これは、ある意味ホラー。 
一見何の不満もなさそうな普通の主婦が、新しい美容室の担当になった若い男からの1通の営業メールを受け取り。
それになにげなく返信をしたことから、彼女の人生があらぬ方向へと…。
にべもなく言ってしまえば、若い美容師にストーカーする主婦のハナシなんだけど。
彼女は、別に美容師に恋焦がれているわけではなく、
ただただ、初めての男でもあり、情熱的だった以前の夫の幻想を追い求めているんだろうな、
そこにいるようでいない夫との距離の図り方に、つまづいてしまったんだな、と悲しい気持ちで読み進めました。
夫婦は、いつまでも生々しい男女じゃいられない。 形をかえてもなお、受け入れ、寄り添っていけるのか。
そこには数えきれないほどの妥協と、慣れ、同じくらいの親しみと同士のような感情が同時に存在する。
それが、世間にあふれている夫婦の本当の姿なのかも。
41歳の主人公小夜子は、ある意味、せつないほどに純粋で、不器用なんだと思う。
具体的に壊れていく感じ。 美容師やその彼女を追い詰めていく様は、なんともいえず、恐ろしくて。
読んでいるうちに止まらなくなりました。 井上荒野さん、初めてだけどよかった。 他のも読んでみよう。
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# by chocoeri-books | 2012-04-26 10:27 | 小説(女性作家)

ワン・モア 桜木紫乃

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6つの中編が、ひとつの幸せな結末へうまくつながっていく小説。
主人公は、30~40代の、さまざまな事情を抱えた男女。
安楽死事件の責任をとって、離島の医師として、赴任している美和。 
高校からの同期で、個人病院を切り盛りする鈴音。
ふたりが対照的な女性として描かれていながら、べたべたしない信頼関係が心地よく入ってくる。
余命半年と宣告された鈴音が、自分の病院をまかせるために、美和を呼び寄せるところから、物語は大きく展開していく。
もうこの歳で傷つきたくない。 相手を思いやる心と自分の感情で揺れ動く。
でも、ひとりは寂しい…。
大人の男女の、心の動きが丁寧に描かれていて、よかった。
初めての作家さん。 もっと読みたくなりました。
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# by chocoeri-books | 2012-03-11 15:34 | 小説(女性作家)

希望ヶ丘の人びと 重松清

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念願の教師になり、妻として母としても懸命だった愛する人が、2年前がんであっけなくこの世を去った。
残された夫、そしてふたりのこどもたち。
彼女がことあるごとに語った、いちばん思い入れの深い、小~中学時代を過ごした、ニュータウン希望ヶ丘。
この町に3人で住むことで、再生しようとする家族の物語。
脱サラし、新しい街で塾長として再出発する父、田島。
そこで出会う、さまざまな個性的な面々。
特に、妻圭子の初恋の相手、エーちゃん。 
学生時代のことではあっても、自分の知らない妻の姿と、なんとも求心力のあるかっこいいエーちゃんに、複雑な感情を隠せない。
父と息子、父と娘、妻と夫。 家族として向き合う真摯な姿が丁寧に描かれています。
18で出会い、40で突然別れてしまった妻を思う気持ちは、せつなくなるほど。
こんなふうに思われたいというのが、妻たち理想なんでは。
ふだんなら恥ずかしくて表現できないような夫婦の絆を描くのが、重松さんらしさ。
最後の最後で、自分と出会ったから、妻は早くに命を落としたのでないか、
もっと別の人生があったのではないかと、気持ちを吐露するところはぐっときました。
エーちゃんみたいな人が実際にいたらなぁ。 
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# by chocoeri-books | 2012-02-07 10:01 | 小説(男性作家)

カラスの親指 道尾秀介

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『 月と蟹 』がおもしろかったので、もう1冊。 直木賞候補になった作品。
読んだ後知ったのですが、すでに映画化され、今秋公開予定だそう。
タケさんが阿部寛で、テツさんが、村上ショージ! 

友人の借金の保証人になったことから、人生の歯車が狂い始め、一番大切な家族までを失った主人公武山。
ヤミ金業者への返済ができなくなり、彼らの仕事、取り立てを手伝うようになり、重すぎる十字架を背負って生きている。
絶望し、詐欺師になって7年。
ある日、自分をだまそうとした男、テツさんと知り合い、コンビを組んで、小さな詐欺をしながら細々とした共同生活を始める。
そこに女の子が転がり込んできて…。
集まった奇妙な仲間たちと繰り広げる大団円。 あっけない作戦の失敗に、???たくさんの疑問符がついたあとの、あのラスト。
う~ん、そうきたか。 無理があるといえばあるけれど、いいじゃないか。 さわやかな読後感。
もちろん、詐欺が生業だなんてと毛嫌いしてたら、読めないだろうけれど。
ちいさな疑問や、序盤の布石が次々に明らかになるところは、やはり痛快。 おもしろかったなぁ。
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# by chocoeri-books | 2012-01-29 15:25 | 小説(男性作家)

本日は大安なり 辻村深月

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辻村さんの作品は、『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ』に続いて2冊目。
物語、ストーリーに引き込まれるおもしろさ!
人生の最大イベントといってもいい、結婚式そして披露宴。 そのハレの日を演出する、ウェディングプランナー多香子。
そして、11月のある大安の日、舞台となるホテルで式を挙げる4組のカップル。
互いを意識しながら生きてきた美人姉妹が、式当日に企てた計画とは。
大好きな叔母の結婚に不安をもつ小学生の甥っ子。
多香子の天敵、クレーマーの新婦。 最悪の客である彼女の結婚式を無事に終わらせることはできるのか。
誰か式を止めてくれ! 追い込まれた新郎、彼が手に持つのは…。
それぞれの思惑が交錯し合い、同時進行する物語。 映像が目に浮かぶよう。
今月、ちょうどNHKでドラマ化されるみたいです。
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# by chocoeri-books | 2012-01-08 11:22 | 小説(女性作家)

往復書簡 湊かなえ

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「十年後の卒業文集」「二十年後の宿題」「十五年後の補習」の3つからなる短編集。
実験的な作品で、物語を手紙のやりとりだけで成立させるというもの。
メールや携帯電話が発達した現代。 文通の必要性が必ずしもないところが、ちょっと苦しいところ。
それでも、うまくできてるなと思ったところも。
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# by chocoeri-books | 2012-01-08 11:21 | 小説(女性作家)

神様のカルテ 2 夏川草介

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神様のカルテ、続編。 続編って、どうなのかなと思ったけど。
前回より、もっとよくなっていました。 
山岳写真家、可憐でつつましく、でも逞しい、妻のハルさん。
男性の理想なんだろうなぁ。 実際には、こんなに自分の感情と夫への愛情をコントロールできる人はなかなかいないんでは。
わたしとしても、あこがれの女性。 彼女の悲しい過去なんかも、さらなる続編へと続きそうな予感。
過酷な環境の中、地域医療に奔走する内科医、一止。 東京の医大の同期が、春から赴任してくるのだが。
数少ない友と心のつながり。 べたべたしない、でも心から思いあっている男の友情が描かれています。
素晴らしい上司との永遠の別れ。 それぞれの夫婦の在り方と絆。 残していく人、残される人。
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# by chocoeri-books | 2011-12-19 10:47 | 小説(男性作家)

オー!ファーザー 伊坂幸太郎

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魅力的な登場人物、ウイットがきいた会話、いろんなところに周到に用意されたさまざまな伏線。
終盤にかけて、それがすべてつながっていく爽快感。
主人公由紀夫は、ごくふつうの高校生。 ちょっとかわった家族構成を除けば…。
ギャンブル狂の鷹、女たらしの葵、肉体派の勲、知性派の悟の4人の父親と、マイペースな母の6人家族。
そんな由紀夫が、友達のピンチに出くわし、たすけたことで、ある事件に巻き込まれていくのだが。
アヒルと鴨のコインロッカーと重力ピエロ、やっぱりこの2冊がいちばん好きだなぁ。
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# by chocoeri-books | 2011-12-05 09:51 | 小説(男性作家)

我が家の問題

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『家日和』の続編。 それぞれの家族の抱える、大なり小なりの問題。
あまりに甲斐甲斐しい、新妻に息苦しさを覚え、毎夜、喫茶店で時間をつぶす夫。
地方出身者同士で結婚した夫婦、初めての帰省。
突然、UFOがみえる!と言い出した夫。 会社で、人が好いゆえに、追い込まれた立場にいると知った妻は…。
両親が離婚するかも…。 突然のことに戸惑う高校生の娘。
ベストセラー作家になった夫に置いて行かれたような気分の妻。 ランニングに目覚め、東京マラソン出場へ。
などなど。 
家日和より、ちょとだけ深刻?になったようなそれぞれの家族の問題。
どれも、あたたかな奥田さんの視点で描かれ、読後感がとてもいい。 
なにはともあれ、家族っていい。 いっしょにいられるってなんて素晴らしいんだろう。
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# by chocoeri-books | 2011-11-27 19:39 | 小説(男性作家)

三年身籠る 唯野未歩子

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作者が映画製作と同時進行で書き上げた小説。 映画はまだ観ていません。
もともとは女優さんだそう。
表題にある通り、冬子29歳は、妊婦。 ただ、月が満ちても、おなかの子は、まったく生まれてくる気配がないのだ。
夫との関係。 夫に対する感情。 愛情とか一緒にいることの意味がはかれない冬子。
また夫徹も、そんな冬子をどうあつかっていいのか、時に気味悪くさえ感じてしまう。
妹、妹の彼、産婦人科医の海、冬子の母、祖母。 独特の価値観、家族の空気。
冬子の言動は、こちらからすると理解しがたいことは多々あるんだけれど。
その切実さと真剣さは伝わってくるものがあって。
こんな世の中に、子供を産み落とすなんて!という考え方。 そして、おなかの子と母はひとつであるような不思議な一体感。
もう歩けるくらいになったおなかの子が、腹の中で動き回るたび、内臓が暴れ、口から鉄の味がする…とう描写はなんともリアルでぞっとしました。
このまま生まれてこなかったら…という恐怖。 
ファンタジーでもなんでもなく、もう歩ける2歳の男の子が、血みどろで生まれ、パパ!と走り寄る場面はすごかった。
わが子と対面した冬子や徹の変化。 親になるということを考えさせられました。
おもしろい作家さんだな。
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# by chocoeri-books | 2011-11-21 18:25 | 小説(女性作家)